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Noether環上の有限生成加群はNoether加群になる

可換環論ではNoether環というものが性質の良いものとして知られているらしい。上の命題の証明について考えていたが、yahoo知恵袋を見て流れだけ分かったような気になっており、今のお気持ちをメモしておく。(代数学2 環と体とガロア理論|日本評論社にはNoether環の項があるので、そのうち正しい証明を確認する必要がある。)

環は加法と乗法の定義された集合で、体とは違って非零元の乗法に関する逆元の存在が仮定されていない集合である。具体的には

  • Rは演算+についてアーベル群(可換群)
    • 結合法則:$ a+(b+c) = (a+b)+c$
    • 単位元: $\exists{0} ; a+0=0+a=a$
    • 逆元: $\forall{a}, \exists{-a}; a+(-a)=(-a)+a=0$
    • 交換法則: $a+b = b+a$
  • Rは演算$\cdot$について結合法則が成立する: $(a\cdot b)\cdot c = a\cdot(b\cdot c)$
  • Rは$+$と$\cdot$について分配法則が成立する: $a\cdot (b+c) = a\cdot b + a\cdot c, (a+b)\cdot c = a\cdot c + b\cdot c$
  • 零元でない単位元1が存在し、$a\cdot 1 = 1\cdot a = a$を満たす

ものを言う。

イデアル

環$R$について、部分集合$I\subset R$が次の性質を満たすとき$I$を$R$のイデアルという

  • Iは+について部分群
  • $R\times I \ni (r,a) \mapsto ra\in I$

加群

加群はベクトル空間のようなもの。環$R$とアーベル群$M$に対してスカラー乗法$R\times M \rightarrow M$が定義されていて、以下を満たすとき($r,s\in R, x\in M$)、Mを環R上のR加群という。

  • $r\cdot(x+y) = r\cdot x + r\cdot y$
  • $(r+s)\cdot x = r\cdot x + s\cdot x$
  • $(rs)\cdot x = r\cdot(s\cdot x)$
  • $1\cdot x = x$

有限生成

R加群Mについて、$a_{i}\in M (1\leq i \leq n)$が存在して、任意の$x\in M$に対して$r_{i} (1\leq i \leq n)$が存在して、$x = \sum r_{i}a_{i}$と表せるとき、Mを有限生成加群という。特に$x=0 \Rightarrow r_{i}=0$が成立するとき、$\{a_{i}\}$をMのR上の基底といい、Mを自由R加群という。

Noether加群

加群Mについて部分加群が常に有限生成(特にM自身も有限生成)であるとき、Noether加群という。

参考: 4.ネーター加群 - arXiv探訪

Noether環

以下の命題は同値であり、これらを満たす可換環RをNoether環という

  • Rのイデアルからなる非空集合は極大元を持つ(極大条件)
  • Rの任意のイデアルは有限生成である
  • Rのイデアルの上昇列$I_{0} \subset I_{1} \subset I_{2} \cdots$に対してある番号nが存在して$I_{n} = I_{n+1} = I_{n+2} = \cdots$となる (昇鎖条件)

環Rについて、(R加群と見なして)Noether加群であるとき、RはNoether環である(イデアルが有限生成ということでたぶん正しい。)

有限生成な群の部分群は必ずしも有限生成であるとは限らない

反例: http://yeaf.web.fc2.com/TasoSeihin.pdf

Noether環上の有限生成加群はNoether加群である (=任意の部分加群は有限生成)

  • 準同型: 写像$f: G \rightarrow G'$についてG上での演算後にfを作用させても、fを作用させてから演算しても結果が等しいとき、fを準同型写像あるいは準同型、また集合GとG'が準同型であるという(ガバガバ)
  • 同型: fが全単射

ネーター環R上の有限生成加群Mがn個の元$\{a_{i}\}$で生成されているとき、$R^{n}$からMへの準同型写像$f: (r_{1}, \ldots, r_{n}) \mapsto \sum r_{i}a_{i}$が存在し、Mは$R^{n}$と準同型。

$R^{n}$がNoether加群であることを数学的帰納法を用いて証明する。まず、$R^{1}$について、Rはネーター加群なので成立。次に、$R^{n-1}$がネーター加群であると仮定し、Nを$R^{n}$の任意のR部分加群とする。射影準同型写像$R^{n}\rightarrow R^{n-1}$をNに制限した写像を$\varphi$とすると、仮定よりIm(φ)、Ker(φ)は有限生成(ここの議論は一番重要なのだが未確認)。Im(φ), Ker(φ)の生成系をそれぞれ{u[1],...,u[r]}, {v[1],...,v[s]}とし、各iについてv[i+s]∈φ-1(u[i])をとることでNの生成系{v[1],...v[r+s]}を得るので、Nは有限生成加群。

全射R-準同型写像ψ: Rn→Mにおいて、Mの任意の部分加群Pの逆像ψ-1(P)はRnの部分加群であり、ψが全射なのでψ(ψ-1(P))=P。Rnがネーター加群なのでψ-1(P)は有限生成であり、ψ-1(P)=<w[1],...,w[t]>とすればP=<ψ(w[1]),...,ψ(w[t])>となってPは有限生成。

参考: 数学の問題です。ネーター環上の有限生成加群がネーター加群になる... - Yahoo!知恵袋

参考2: 有限表示というものがジョルダン標準形と関係があるらしい: Noether環上の有限生成加群の有限表示