大学のシラバスコーナーにあった「DNA鑑定 -その能力と限界」を読んだ。10年ほど前の内容で少し古そうと感じることが多かったが、このエントリを書こうとして続編があることに気づいた。絶対に許さない()。
構成
- 第1章: DNA鑑定とは
- DNA鑑定の始まり
- DNAが語る生命の流れ
- DNA鑑定手法とその進歩
- 確率計算のためのサンプル集団の信頼性
- 第2章: 個人識別
- 個人識別と刑事鑑定
- 刑事鑑定における確率計算
- 個人識別の落とし穴
- 指針や法による規制
- 犯罪者DNAデータベース
- 想定事例に基づいた鑑定の概要
- 第3章: 親子鑑定
- 親子鑑定の考え方
- 親子鑑定における確率計算
- 親子鑑定の落とし穴
- DNA鑑定の倫理
- 想定事例に基づいた親子鑑定の概要
- 付録
- 用語集
- 日本人集団における各STRのアリールの出現頻度
- 資料
用語の定義
今やっていることに必要なものを中心に。(間違いが含まれている可能性があるので注意)
- 多型: 普通と異なる遺伝子で頻度が1%以上あるもの。1%以下だと変異。
- 遺伝子座: ローカスとも言う。遺伝子(転写領域を指す。転写調節領域を含むこともある。)の染色体上での位置。
- 対立遺伝子: アリルとも言う。ある遺伝子座を占めうる複数の塩基配列。
- STR: マイクロサテライトともいう。数塩基の単位配列の繰り返し。
- ミニサテライト: 10から数十塩基対の反復単位が数十個繰り返したもの。
- SNP: 一塩基多型のこと。
- RFLP: 制限酵素断片長多型のこと。制限酵素によって切断されたDNA断片の長さが、同一種内の個体間で異なる(多型を示す)こと。
- ハプロタイプ: 単一の染色体上のDNA配列のこと。または遺伝的に連鎖している多型の組み合わせ。
- mtDNA: ミトコンドリアDNA。女性系列が分かる。
特徴としては多型がcontrol regionに集中していること、ヘテロプラスミー(同一人物でも配列が異なること)がアリルこと。 - Y染色体ハプロタイプ: Y染色体上で連鎖している多型の組み合わせ。男性系列が分かる。
精子核DNAはプロタミン(ヒストンみたいなやつ)により安定していること、蛋白分解酵素に強いことから採取しやすいらしい。 - 父権肯定確率: ある男性がある子供の父親である確率。$P(F_{hypo}, M|C)$
- 父権否定確率: 一般の男性がある子供の父親で無い確率、つまり否定される遺伝子型全ての出現確率。
HW平衡
ハーディー・ワインバーグ平衡とは世代が変わっても集団の対立遺伝子の頻度が変わらないこと。 HW平衡が成立する条件は、
- 自由交配(任意交配)である。
- 個体群内の個体数は十分に大きい。理想的には無限大である。
- 他の個体群との間で個体の流出・流入がない。
- 突然変異が起こらない。
(その遺伝子座については)遺伝子型や表現型の違いによる自然選択がない。
なので、例えば同族結婚が多かったりするとHW均衡は成立しにくい。 検定についてはHW検定を参照。$\chi^{2}$検定やFisherの検定が用いられる。